近年、働き方の多様化が進む中で、「副業から正社員へ」という新しい転職スタイルが注目されています。これは、副業として関わっていた企業に、正社員として入社する新しい働き方です。
しかし、「副業での働き方と本業での働き方は違うのでは？」「本当にうまくいくの？」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな「副業転職」に興味があるけれど、一歩踏み出せないあなたに向けて、メリット・デメリットから企業側の本音、そして成功するための具体的なロードマップまで、徹底的に解説しますので、最後までご覧ください。
副業転職とは？
最近、「副業転職」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、副業として関わった企業に、正社員として転職することを指します。いわば、お試し期間を経てから、本格的にその会社の一員になる新しい働き方です。
副業転職が生まれた背景
副業転職という働き方が注目されるようになった背景には、いくつかの社会的な変化があります。
まず、働き方の多様化です。終身雇用制度が崩壊し、転職が当たり前になった現代では、個人が複数の収入源を持つことや、柔軟な働き方を求めることが一般的になりました。政府も副業を推進するようになり、多くの企業が副業を解禁しました。
次に、企業の人材獲得競争の激化です。少子高齢化が進む日本では、どの企業も優秀な人材を確保することに苦心しています。しかし、従来の採用活動では、書類選考や数回の面接だけで、その人のスキルや人柄、社風との相性を深く見極めるのは困難でした。そこで、副業という形で一緒に働くことで、採用のミスマッチを減らそうとする企業が増えてきました。
さらに、クラウドソーシングやスキルシェアサービスなどの普及も大きな要因です。これらのサービスを利用すれば、企業はプロジェクト単位で専門性の高い人材を外部から調達しやすくなりました。副業人材として活躍する個人も増え、双方にとってメリットのある仕組みが整ったと言えるでしょう。
副業転職が向いている人の特徴
副業転職は、誰もが成功するわけではありません。この働き方に向いている人には、いくつかの共通点があります。
- 新しい環境に飛び込むのが好きで、変化を楽しめる人
- 副業から正社員になるということは、働く場所や仕事内容、人間関係が大きく変わる可能性があります。変化を前向きに捉え、新しい環境でも柔軟に対応できる人が向いています。
- 主体的に行動し、自分のキャリアを自分で切り開きたい人
- 副業転職は、企業から声がかかるのを待つだけでなく、自分から積極的に正社員への意向をアピールするなど、主体的な行動が不可欠です。
- スキルアップやキャリアチェンジを強く望んでいる人
- 現職では得られないスキルを副業で身につけ、それを活かしてキャリアチェンジをしたいと考えている人には、最適な選択肢の一つです。
- コミュニケーション能力が高く、周囲と良好な関係を築ける人
- 副業中から、企業の社員との信頼関係を築くことが成功の鍵になります。円滑なコミュニケーションを通じて、自分の価値をアピールできる人が有利です。
無理に副業をやる必要はない
副業転職は魅力的な選択肢ですが、誰もが必ず副業を始めなければならないわけではありません。本業に集中したい人や、プライベートの時間を大切にしたい人にとって、無理に副業を始めることは、かえって心身の負担になる可能性があります。
また、副業は必ずしも正社員登用に繋がるものではありません。企業側も、あくまで必要なスキルやリソースを一時的に確保する目的で副業人材を募集しているケースも多いからです。「正社員になりたい」という目的のために、相性の悪い副業を無理に続けるのは賢明ではありません。
副業転職：企業側の目線
副業転職を企業側の目線でみていきます。
メリット
企業にとって、副業人材を正社員として迎え入れることには、多くのメリットがあります。
- ミスマッチのリスク低減
- これが最大のメリットと言えるでしょう。書類や面接だけではわからない、個人のスキルや仕事への向き合い方、チームとの相性を、一緒に働く中でじっくりと見極めることができます。これにより、採用後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを大幅に減らすことができます。
- 即戦力の人材を確保できる
- すでに副業で関わっているため、その企業での働き方や業務の流れを理解しています。入社後の研修期間を短縮でき、すぐに戦力として活躍してくれることが期待できます。
- 採用コストの削減
- 従来の転職活動では、求人広告費やエージェントへの手数料など、多額の採用コストがかかります。しかし、副業人材の中から正社員候補を探すことで、これらのコストを抑えることができます。
- 多様な視点やスキルを取り入れられる
- 副業人材は、他社での経験や知見を持っています。正社員として迎え入れることで、社内に新しい風を吹き込み、組織の活性化に繋がります。
デメリット
一方で、企業側にもデメリットは存在します。
- 正社員登用を前提としない副業人材への対応
- 企業側が正社員として誘いたいと思っても、本人が副業のまま続けたいと考えるケースも当然あります。その場合、企業側は「なぜうちの会社で正社員として働いてほしいのか」を丁寧に伝え、納得してもらう必要があります。
- 既存社員との不公平感
- 副業人材は、すでに専門性の高いスキルを持っていることが多いため、既存社員が「なぜあの人だけ特別扱いされるのか」と感じてしまう可能性があります。公正な評価制度や、副業人材を受け入れるための社内環境づくりが重要になります。
- 副業人材への依存リスク
- 特定の業務を副業人材に任せきりにしてしまうと、その人がいなくなった際に業務が滞るリスクがあります。副業中から、業務の属人化を防ぐ工夫が必要です。
副業転職：求職者側の目線
副業転職を求職者側の目線で見ていきます。
メリット
求職者、つまり副業をする側にとってのメリットも非常に大きいです。
- 「お試し期間」として働ける
- 転職活動では、企業のカルチャーや職場の雰囲気、仕事内容のリアルな部分を知ることは難しいものです。しかし、副業として働くことで、その会社の「リアル」を肌で感じることができます。入社後のギャップを最小限に抑えることができるのは、副業転職の最大の利点です。
- スキルアップやキャリアチェンジの機会になる
- 現職では経験できない分野の仕事に挑戦できるため、スキルアップに繋がります。たとえば、本業では経理の仕事をしている人が、副業でWebマーケティングの仕事に挑戦し、新しいキャリアパスを切り開くことも可能です。
- 転職活動の手間が省ける
- 副業で良好な関係を築けていれば、企業側から「正社員になってほしい」とオファーが来る可能性があります。そうなれば、自分から転職活動をする必要がなくなり、転職活動にかかる時間や労力を大幅に削減できます。
- 収入源が増える
- 当然ながら、副業をすることで本業とは別の収入源を得ることができます。経済的な安定にも繋がり、安心してキャリアチェンジに臨めます。
デメリット
もちろん、求職者側にも注意すべきデメリットがあります。
- 本業との両立が難しい
- 副業の時間が確保できず、結果的に本業にも副業にも集中できなくなるリスクがあります。特に、平日の夜や休日が副業で埋まってしまい、プライベートな時間がなくなってしまうケースも珍しくありません。
- 期待通りの正社員登用がない可能性
- 「副業で頑張れば正社員になれるかも」と期待していても、必ずしも正社員登用の話が来るわけではありません。あくまで「お試し期間」であり、正社員採用に至らない可能性も考慮しておく必要があります。
- 副業の仕事が本業にバレるリスク
- 副業を禁止している会社に勤めている場合、副業が発覚すると何らかの処分を受ける可能性があります。副業を始める前に、必ず会社の就業規則を確認しましょう。
- 仕事への責任感の薄さ
- 「どうせ副業だから」という気持ちで仕事に取り組んでしまうと、企業からの信頼を失い、正社員登用のチャンスを逃してしまう可能性があります。副業であっても、プロ意識を持って仕事に取り組むことが大切です。
実体験
私がかつて副業で関わっていた企業の例を挙げます。その企業は、スタートアップで、事業拡大のために営業部門の強化を急いでいました。
私は副業で、週に数時間、営業戦略の立案やセールスプロセスの改善を手伝っていました。仕事自体は非常にやりがいがありましたが、スタートアップ特有のスピード感や、常に変化する状況についていくことに、大きなストレスを感じるようになりました。
特に、本業が忙しい時期と副業のタスクが重なった時には、タスクの消化に追われ、心身ともに疲弊してしまいました。
この経験から、副業をすることで、その企業の良い面だけでなく、自分にとって合わないと感じる点も、身をもって体験できたのは大きな収穫でした。
副業転職の注意点
副業転職にはいくつか注意点があるため、お伝えしていきます。
正社員で求められることは違う
副業でどれだけ成果を出していても、正社員になると求められることや責任の範囲は大きく変わるということを理解しておく必要があります。
副業では、特定のプロジェクトやタスクに限定的に関わることが多いです。しかし、正社員になると、プロジェクト全体の責任者になったり、メンバーの育成やマネジメントを任されたりするなど、より広範な役割を担うことになります。
また、副業では「成果」が最優先されますが、正社員では「組織への貢献」や「企業文化への適合」といった、より抽象的な部分も評価の対象になります。
正社員になったら態度が一変する？
残念ながら、副業の際には非常にフレンドリーで親切だった社員や上司が、正社員になった途端に態度が冷たくなったり、厳しい要求をしてくるようになるケースもゼロではありません。
これは、副業と正社員では、会社からの期待値や関係性が変わるためです。副業の際は、外部の協力者として丁寧な対応をしていても、正社員になれば「会社の仲間」として、より高いパフォーマンスやコミットメントを求められるようになるからです。
「正社員になったら態度が一変するのでは？」という疑念を抱えたまま入社することは、双方にとって不幸な結果を招く可能性があります。内定後の面談などで、正社員として働く際の具体的な役割や、期待されることについて、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
条件面の擦り合わせ
副業から正社員になる場合でも、条件面の擦り合わせは入念に行う必要があります。
「副業で知り合った間柄だから、細かいことはいいか」と安易に考えてしまうと、後々大きなトラブルになる可能性があります。
給与、賞与、福利厚生、勤務時間、休日、残業代の有無、有給休暇の取得条件など、正社員として働く上で必要な項目は、すべて書面で確認しましょう。特に、副業で受け取っていた報酬と、正社員としての給与体系がどう変わるのかは、しっかりと確認すべきポイントです。
副業転職ロードマップ
副業転職を狙う際のロードマップです。
副業を始める
まずは、副業を始めることからスタートです。いきなり正社員を目指すのではなく、まずは「お試し」のつもりで始めてみましょう。
副業・複業マッチングサービスを活用
一番手軽に始められる方法です。複業クラウド、SOKUDAN、クラウドワークス、ランサーズといったマッチングサービスに登録して、気になった案件に応募してみましょう。
知り合いや友人の会社で副業
信頼できる知り合いの会社であれば、安心して副業を始められるかもしれません。仕事内容や報酬の交渉もスムーズに進むことが多いでしょう。
副業している時の自分を内省する
副業を始めたら、ただタスクをこなすだけでなく、定期的に自分自身を振り返る時間を作りましょう。
貢献できているか
自分が提供したサービスやスキルが、企業にどのような価値をもたらしているかを考えます。成果が目に見えてわかると、モチベーションも上がります。
やりがい、環境、報酬
「この仕事にやりがいを感じるか」「この会社の働き方は自分に合っているか」「報酬は適切か」など、さまざまな側面から副業の仕事を見つめ直しましょう。
本業にしたいと思えるか
これが一番重要なポイントです。「この副業を、もし毎日8時間働いても、楽しく、やりがいを感じられるか？」と自問自答してみましょう。
正社員に向けて動く
「この会社で正社員として働きたい」という気持ちが固まったら、いよいよ正社員への道を歩み始めます。
企業側から声がかかるのを待つ
最も理想的なパターンです。企業側から「正社員として働いてほしい」と声がかかるように、副業中から真摯に、プロとして仕事に取り組むことが大切です。
採用のお手伝いをする
正社員登用の可能性をさりげなく探る方法です。たとえば、「私、この会社で働かせていただいてから、〇〇のスキルが向上し、毎日がいきいきしてきました。だからこそ、採用面でもお力になりたいと考えていまが、今後、正社員の募集はお考えされていますか。」
といった質問を投げかけることで、副業での好感度を伝える＋採用活動への意欲を示す＋正社員募集意向あるかを確認できる、と、正社員に向けての情報収集ができます。
さりげなく正社員意向アピール
情報収集をして、企業側に正社員募集意向があり、そのポジションが自分がになえると感じた場合は、「もし仮に私が〇〇のポジションを担うとしたら、まず〇〇をして、その後〇〇しますかね。」 と、さりげなく正社員登用への関心を伝えてみましょう。
内定後
企業から内定をもらったら、いよいよ最終段階です。
条件面を細かすぎるぐらい確認
再度になりますが、条件面の確認は徹底的に行いましょう。口頭での約束だけでなく、必ず書面で確認します。
冷徹に冷静に判断する
「せっかく内定をもらったのだから、受け入れなければ」と感情的になるのは危険です。内定をもらった喜びは一旦脇に置き、本当にその会社が自分のキャリアプランに合っているかを、冷徹に、冷静に判断しましょう。
どんな結果になっても円満に終える努力をする
たとえ内定を辞退することになったとしても、これまで副業でお世話になった企業です。感謝の気持ちを伝え、円満に終える努力をしましょう。
まとめ
「副業転職」は、企業と求職者の双方にとって、採用のミスマッチを減らす有効な手段であり、新しい働き方として今後ますます広がっていくでしょう。
ただし、副業での働き方と、正社員として求められる働き方は違う可能性があるということを忘れてはいけません。
副業は、あくまで「お試し期間」であり、特定のタスクやプロジェクトに限定的に関わることが多いです。しかし、正社員になれば、より広範な責任と役割を担うことになります。
副業転職を成功させる鍵は、「お互いのことを深く理解し合うこと」にあります。 副業中から、企業側は「この人に正社員として何をお願いしたいか」を明確にし、求職者側は「正社員としてこの会社で働くイメージ」を具体的に描くことが重要です。
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